合成吸収糸とカットグット (腸線)縫合糸の比較

従来吸収性縫合糸はPGAに代表される合成吸収糸とウシ由来のカットグット縫合糸の双方が使用されてきた。
しかしながら欧州を起源としたBSEの広まり、さらにはわが国でのBSE牛の検出に至り、予防的観点から動物用カットグット縫合糸は、その製造、輸入が2001年10月18日を以って禁止となった。
今後合成吸収糸をご検討されるに際し、すこしでも参考になればとその簡単な比較を述べる。

1) 糸の太さ：

合成吸収糸の太さとカットグット糸の太さは同じUSPサイズ号数規格でも異なる。同じUSPサイズ号数ならカットグット糸のほうが太い。カットグット糸と同じ規格の合成吸収糸は合成吸収単糸のモノシンセである。

2) 結節抗張力：

合成吸収糸の強度とカットグット糸の強度は同じUSPサイズ号数規格でも異なる。 同じUSPサイズ号数なら合成吸収糸のほうが強い。同じ径なら合成吸収糸が大幅に強い。 また合成非吸収糸と比べても強い(グラフ参照)。 カットグット糸と同じ規格の合成吸収糸は合成吸収単糸のモノシンセである。

3) 臓器の反応：

合成吸収糸の組織反応は軽微である。カットグット糸の組織反応は中〜強である。

4) 分解様式：

合成吸収糸は生体内の水分による加水分解である。カットグットは分解酵素による。 従い合成吸収糸は単糸、編糸とも空気中の湿気にて抗張力が失わせる。

5) 結び目の安定性：

合成吸収糸単糸モノシンセの結び目の安定性は良い。(可塑性) 一方カットグット糸は湿潤の状態では結び目が緩みやすくまた強度が変化しやすい。

6)有効期限について：

合成吸収糸はアルミラミネートされたバッグに密封されている。 未開封の合成吸収糸の有効期限は製造日から起算して３年である。 カセットの場合は開封してから１２０日間が有効期限。 開封後の有効期限は合成吸収糸の分解様式と密接な関係がある。

合成吸収糸は空気中の水分にても加水分解が進行する。 したがい開封後はより大気中の水分にさらされるため、その強度保証期間は１２０日ということになる（未開封状態での有効期限が１２０日以上残っていても）。 カットグットの場合には大気中に存在しない蛋白分解酵素により分解される。 それで開封してもその有効期限に変化はなかった。

USP規格	最小径			最小平均結節抗張力
サイズ号数	合成吸収糸 シンセソーブ	合成吸収糸 モノシンセ	カットグット糸	合成吸収糸 シンセソーブ	モノシンセ＆カットグット糸
3-0	0.20mm	0.30mm	0.30mm	1.77kg	1.25kg
2-0	0.30mm	0.35mm	0.35mm	2.68kg	2.00kg
0	0.35mm	0.40mm	0.40mm	3.90kg	2.77kg
1	0.40mm	0.50mm	0.50mm	5.08kg	3.80kg
2	0.50mm	0.60mm	0.60mm	6.35kg	4.51kg
3	0.60mm	0.70mm	0.70mm	7.29kg	5.90kg
4	0.60mm	0.80mm	0.80mm	7.29kg	7.00kg

( 出展 : 米国薬局方　USP24版 )